彼の記憶が失われた日②
電車を乗り継ぎ、病院へ到着。
待合室で少々の時間を過ごし、呼ばれて病室へ。
そこには不安げな表情を浮かべた彼がベッドの上に腰掛けていました。
私が来たことに気づき、顔を見上げた彼は、目が合った瞬間に大号泣。
今まで泣いた姿は見た事がありましたが、今日ほど大粒の涙を流して泣いている様子を見た事がありませんでした。
そんな姿に釣られて、思わず涙が頬をつたいそうでした。
慌ててぬぐい、鞄からハンカチを取り出して彼に渡しました。
ゆっくりゆっくり涙を拭く彼。
この時、私が誰か分かっていなかったけれど、一目惚れをしていた事を後々知り、心が温かくなりました。
お医者様と話し、記憶喪失だという事が分かったものの、まだ非現実的で、とりあえず話を聞いてうなづく事しかできませんでした。